【アーカイブ版】セイヨウ情勢 : 市民参加による外来種(セイヨウオオマルハナバチ)モニタリングと対策のためのリアルタイム情報共有サイト

- 最終更新日: 2015年12月28日
本サイトは更新を終了しました。北海道生物多様性保全活動連携支援センター(HoBiCC)が運営する新「セイヨウ情勢」をご覧ください。

【過去の情報】今年の捕獲、すでに昨年を上回りました&決定的瞬間!

発信日:2008年08月20日
発信者:菊池 玲奈
お盆もあけて、8月も後半。東京は相変わらず30度を超える日々が続いていますが、
それでも時折、吹く風に涼しさを感じるようになりました。
確実に、次の季節が近づいてきています。
 
マルハナバチの監視活動も、最終シーズンへ。今年は例年になく早く確認された
新女王ですが、時期だけでなく、確認される数もまた、別格に多いとのこと。
また「花粉ダンゴ付の新女王があまりにも多い。初めて生まれた働きバチのような
小さいハチもまた見られるようになっているし、新女王が今年のうちに営巣をはじめて
いるのでは!?」なんていう声も沢山届いていて・・・
 
「例年と違う」と簡単に言ってしまいますが、それは皆さんが各地で、継続して活動を
続けてくださっているからこそのこと。
また(「科学的」に実証することは難しいとしても)、皆さんが現地で感じたことをもとに、
さまざまな工夫や知恵をめぐらせて活動を展開して下さっていることを、本当に心強く
感じています。皆さん、ありがとうございます。
 
☆ ただいまの捕獲頭数、33,278頭。すでに昨年の27,827頭を上回りました!☆
 
シーズン最初は「今年は例年より、セイヨウが少ないよ」という印象が多かった
今年の活動。しかしその後、一部地域では「一気にわき上がるように出てきた」という
声があがり、捕獲の報告も急増。昨シーズンを通しての捕獲数「27,827頭」をすでに
大きく上回っています。皆さん、おつかれさまです。
「それだけのセイヨウが捕獲できてしまう」ことは深刻な事態ですが、でも、それだけの
セイヨウを捕獲して下さる方がいる、というのは、すごいこと。
 
ちょっと堅いことをいうと、「外来種対策」というのは、「生物多様性」の脅威として
国際的にも対策が急務とされており(ちなみに「生物多様性保全」は、「温暖化
対策」と並ぶ2大重要事項とされています)、中でも「市民参加」が重視されてい
ます。このため、市民の皆さんによる「外来種モニタリング」の事例は国内外に
沢山あるのですが、一日限りのイベントにとどまらず日常的に、しかも直接、
対策としての「捕獲」に主体的に携わって下さっている事例は、おそらく国際的に
見ても少ないのではないかと思います。
ひとりひとりの皆さんの活動があってこその「すごいこと」。本当にありがとうございます。
 
今日現在までの捕獲の状況をまとめましたので、ご参照下さい。
 
 
☆ うわっ、こんな観察も!?モニターの皆さんからのご報告 ☆
 
皆さんからいただくメールや報告用紙。セイヨウの捕獲数だけでなく「こんなことを
感じました」とか「こんなのを見ましたよ!」といった情報を沢山分けていただくの
ですが、その内容のすごいこと!こんなシーンに出くわされるのも、皆さんが沢山の
時間や思いを、この活動にかけてくださっているからだなあ、といつも感激しています。
今日は、その中からいくつか皆さんにもご紹介させていただきます。
 
1.セイヨウ食べられる、の巻
 
まずは雨竜町・Sさんから<7月21日・ご馳走セイヨウ>
 
 
「ローズガーデンではバラを見に行ったのですが、花より先に「セイヨウ」
を探すのは病気でしょうか。でも枯れたバラの花でセイヨウが訳のわか
らん「ガ」のような昆虫に捕食されているのを見つけました。その昆虫は
セイヨウを掴まえたまま飛んでいった、たぶんご馳走なのでしょう。
セイヨウは半死に状態でいるようであまり動かなかった。
 
※ このガのような生きもの、調べてみたら、「シオヤアブ」でした。
   肉食のアブで、甲虫やハエ、アブなど他の昆虫を捕まえて食べる
     そうです。
 
続きまして旭川市・Iさんから<セイヨウ捕食される>
 
 
こちらも決定的瞬間。この色は、オオスズメバチでしょうか・・・。
私も調査のときに、何度もマルハナバチをねらうスズメバチを見ていますが、
そのときはセイヨウは果敢に威嚇して逃げ、のんびり屋のエゾオオばかりが
狩られていました。
 
ちなみに春の東川町での捕獲行事の時は、参加した小学生がモズのはや
にえになったセイヨウを見つけてくれました。
 
 
 
2.今の時期ならではの観察では・・・
 
 
こちらも、旭川市のIさんから。8月17日、支度玄関横のアスパラで交尾を
していた瞬間です。下の小さいハチがオスバチ。上が新女王バチです。
数十分にわたりこのような交接が続くわけですが、Iさんいわく「交尾のまま
飛んでゆくのにはびっくり!」とのこと。
飛び去った後を追いかけて捕獲し、冷凍してくださったそうです。
 
交尾をした新女王は、来年の春まで越冬する場所をさがします。
昨年、日高町のHさんからの観察をお知らせしたところ、恵庭市のIさんから、
8月17日に、下記のようなメールをいただきました。
 
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今日16時00分、セイヨウ調査を終え、妻とバトンタッチ!
私が庭でくつろいでいると、ブーンという羽音が聞こえてきました。
その音の方へ目をやると、セイヨウの女王が飛んできました。
まるで春先の巣探しのように低空で飛んでいましたが、とてものんびり飛んでいました。
 
昨年の9月16日Hさんが見たというメールを思い出し、しばらく観察してみることにしました。
 
まず、長ネギの根元付近の地面にとまり、ウロウロ・・・
次にジャガイモの根元付近をウロウロ・・・
次にイチゴの根元に行ったと思うとモゾモゾと土を掘り始めました
あっという間に掘り進み、すぐに姿が見えなくなりました
 
見失うと困るのですぐに掘り返して踏み潰しましたが・・・・
もう冬眠に入る時期なんですね。
 
写真を添付しました。
下の写真に○印をつけました。
黒と黄色、そしておしりがわかりますか?
 
 
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床下に営巣し、玄関の隣で交尾をし、お庭の土に潜り込む・・・。
風除室にセイヨウの女王バチが入ってきた、という報告も最近増えてきていて、
本当に「人の生活」にうまく溶け込みながら、セイヨウは増えているようです。
モニターの皆さんからも「在来のマルハナバチの交尾をみたよ」とか「巣を
見つけたよ」という報告は、残念ながらほとんどありません。
「セイヨウならでは」の特徴なのだとしたら、増えていくにはとても有利ですよね・・・。
でもそれは、一方で、人の眼の届く場所にいる機会が多い=生態が
把握しやすく、捕獲もしやすい という一面も持っている。
 
次から次へとわき上がるように出てくるセイヨウをとってくださる中で、
「もう、セイヨウの拡大を防ぐことは出来ないのでは」という無力感にさいなまれる、
というお便りをいただくこともあります。一方で「私が活動している場所では、
確実にセイヨウが減っています」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
おひとりおひとりが感じられているのは、その現場に関わられているからこその
ことですので、私が軽々しく解釈することは出来ません。
でも、地域の自然にとって、皆さんおひとりおひとりの活動が、本当に大きな力となり、
セイヨウの侵入の早期発見にもつながっている。
セイヨウの拡大を上回るスピードで、捕獲に協力して下さる方を増やしていけるか。
東京にいて、1頭のセイヨウの捕獲にも貢献できない私が言うのはおこがましいけれど、
北海道に生活されている500万人の方の可能性は、まだまだ否定するには早いと、
私は思っています。
 
 
3.巣を掘り出してみたら・・・
 
今年はすでに33個の巣が見つかっています。北海道庁のご協力で、ハチの巣の
除去をしてくださっている業者さんからの情報をご提供いただいていること。
モニターの皆さんが自主的に保健所に情報の提供を求めて下さったり、ご近所の
方がモニターさんに「通風口から出入りしているよ」と教えて下さったり。
掘り出しや出入り口の粘着シートの設置など、巣の対応にも、沢山の方がご協力
下さっています。
 
旭川市で、車庫棚板の下に出来た巣は、下記のような大きな巣。
 
 
繭や幼虫を、全部並べて下さったところ・・・
 
 
・・・となったそうです。小さい写真で見にくいと思いますが、上の段に
並んだ大きな繭は、新女王の繭。小さい繭は、働きバチとオスバチの
繭です。
 
この巣では、すでに羽化して捕獲された女王バチと大きな繭をあわせた
ところ、女王の数が500を超えていたそうです。ニュージーランドで確認された
セイヨウの巣では(牧草の受粉のために、人為的に導入されました)
900頭の新女王バチを生み出したコロニーも確認されているそうです。
 
出来るだけ「巣を作らせない」こと。
見つけたら、早めに対応すること。
 
その重要性が改めて明らかになりました。巣を掘り出して下さった皆さん、
おつかれさまでした。
 
 
・・・今回のマルハナ通信はちょっと、長くなってしまいました。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
新女王が分散するこれからの季節、今までセイヨウが見つからなかった地域でも、
セイヨウが現われるかもしれません。
今後ともどうぞ、監視活動へのご協力、よろしくお願いいたします。