【アーカイブ版】セイヨウ情勢 : 市民参加による外来種(セイヨウオオマルハナバチ)モニタリングと対策のためのリアルタイム情報共有サイト

- 最終更新日: 2015年12月28日
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【過去の情報】旭岳でのセイヨウオオマルハナバチの確認・・・

発信日:2008年09月11日
発信者:菊池 玲奈
私の東大での情報発信も、残すところあと3週間ほどとなりました。
 
・・・そんななか、皆さんに辛いお知らせをしなければならなくなってしまいました。
本当に残念なのですが、大雪山・旭岳で、セイヨウが営巣に成功した可能性が
非常に高いことがわかりました。環境省北海道地方環境事務所の方からの
ご連絡をもとに、下記、報告させていただきます。
 
<旭岳におけるセイヨウの確認について>
 
昨年9月19日、旭岳姿見の池周辺で、セイヨウのオスバチが確認されました。
このことから、環境省では今年、6月から「グリーンワーカー事業」を通じて、旭岳
周辺のセイヨウオオマルハナバチ監視活動業務を実施され、自然保護官事務所や
パークボランティアの方が監視を続けてくださっていました。
 
6月、7月にはセイヨウの確認はありませんでしたが、8月11日、大雪山国立公園
旭岳鏡池付近でセイヨウの女王バチが捕獲され、翌日12日にも1頭、その後
9月9日までに、麓の旭岳温泉街も含め、計・10頭が捕獲されました。
捕獲標本は、菊池が先日東川にお邪魔した際に確認させていただきました
(詳しくは、添付の表をご覧下さい)。
 
昨年と大きく異なるのは、今年は、非常に近い場所で、連続してセイヨウが
捕獲されていること。何より、残念ながら「営巣の証」ともいえる「働きバチ」が
捕獲された点です。セイヨウが生息する東川市街地からロープウェイ山上までは、
直線距離でも20km近くあり、このことから、風による連続的な吹上げ、というよりは、
山上で営巣された、と、考える方が自然なのではないかと思います。
 
<そのほかの山岳地域でのセイヨウの確認>
 
今年は、山岳地域でのセイヨウの確認が相次いでいます(こちらも、添付をご覧下さい)
国立公園内では、9月2日、大雪山国立公園の黒岳石室付近で、管理人の方が
セイヨウを至近距離で目撃されています。
 
また、富良野市の芦別岳(雲峰山1,560m付近)では、北海道庁の依頼による山岳地帯の
調査により、7月3日、エゾツガザクラで、女王、働きバチ、オスバチそれぞれ1頭、計3頭が、
1時間ほどの間に捕獲されています。
 
<「風」に乗って山に侵入!?>
 
上記の芦別岳で、セイヨウを捕獲された方に、捕獲の状況をお伺いしたところ、下記の
ようなメールをいただきました(一部編集させていただきました)。
 
=芦別岳の麓の登山口付近では元々トマトハウス農家も多く捕獲もされています。
更に麓には一時間位で廻れる散策コースが二本あるのですがエゾエンゴサク、ウツボクサ、
ムラサキヤシオ等の花に群れるセイヨウが目撃されています。麓でこれだけ目撃されている
のだから、天候、風の条件の良い日に調査すればの思いで調査日を狙ってました。
天候は予報は晴れでしたが当日朝は曇り、風は登山口は無風でした。午前6時新道コース
登山開始。観察しながらの登山でしたが、本年はこの山も雪が例年より少なく花も二十日位
早い感じがしました。ウコンウツギ、ウラジロナナカマド、ウサギギク、メアカンキンバイが花盛りでした。
10時45分頃標高1570mの雲峰山に到着したが風がかなり強く、天気は曇り、気温は18度
でしたが、体感温度は風のためかもっと低目に思われ、山頂は見えない状態でした。
風の当らない場所で休んでいるとエゾツガザクラにハチを見付けました。それで一時間位観察したが
セイヨウらしいので大きいのと小さいのを三匹捕獲しました。
これまで目撃があったりなかったりは、風の関係ではと思わます。
後続の報告を期待して待ったのですが、その後一名の報告があった由聞いております=
 
また、羅臼町にお住まいで、知床のマルハナバチを長年観察していらっしゃるAさんからは、羅臼岳
登山中にみた光景を、下記の通り教えていただきました(こちらも、一部編集させていただきました)。
 
=9月9日、羅臼岳に行ってきました。ちょうどこの日から乾いた空気に入れ替わって、年に
一度機会があるかどうかの澄み渡りようで、遠く根室半島や、ヒトの活動も伺えるほど近くに
見える国後の向こう側には歯舞・色丹の島影までが見えていました。
そんな中で海から吹き上がる風に乗って移動するマルハナの女王が目につきました。春先や
この時期、峠を越えるマルハナの女王はよく目にしますが、花を巡るわけではなくブーンと一気に
飛び去ってしまうため、どのマルハナなのか?わかりづらいのが悩みの種です。この中にセイヨウが
含まれていないことを祈りたいのですが・・・=
 
*****
 
セイヨウの侵入は「じわじわ」型に限らず、風などを利用して一気に飛び火的に分散し、その先の
環境次第で定着してしまう、という「おそれていたこと」が始まりつつあるのかもしれません。
皆さんご存じの通り「増え始めれば、早い」生きものです。山の上のお花畑にセイヨウが群れ飛ぶ
姿をみずにすむには、どうすればいいでしょうか・・・。
山岳地域は、国立公園や国定公園などの指定により、一般の方の自由な動植物の採取が禁じ
られていること。また、何より「人の目」で監視出来る地域が極めて限られることから、非常に
やっかいではあるのですが、侵入ごく初期であれば、少数の捕獲でも効果が期待できます。
限られた方たちにお願いすることになりますが、山岳地帯での捕獲をより一層、強化していかなければ
ならなそうです。
 
また、ひとりひとりが出来ることは、とにかく「山への侵入の機会を減らす」ために、市街地での
セイヨウの密度を減らすこと。そのことに尽きると思います。ひとりひとりの活動を「焼け石に水」
ととらえるか、それとも「ハチドリのひとしずく」と考えるか・・・。東京にいる私が言うのは無責任かも
しれませんが、それでもやっぱり、まだまだあきらめるわけにはいかない!どうか、ひとりでも多くの方の
お力をお貸し下さい。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
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旭岳におけるセイヨウオオマルハナバチの確認に関する問い合せ先:
 
北海道地方環境事務所・野生生物課
鈴木 清二さん
TEL011-251-8704 FAX011-219-7072
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これで終わるのは切ないので・・・
<おまけ・オスと働きバチの見分け方>
 
この時期、モニターさんからよく問い合わせをいただくのが「オスと働きバチの見分け方」
今回、旭岳で捕獲されたハチの標本を、地元のNPOの方とチェックしました。
 
大きさではなかなか見分けにくいのですが、まず
 
1.腹部の末端がメスはとがる(針があるため)、オスはまるい
2.腹部の節の数が、メスは6節、オスは7節
3.触覚がオスの方が長い
 
などを見ます。確実に見分けるためには、腹部の一番先端を針などで開けてみて、「針」が
でるか「交接器」が出るかをチェックします。
 
ちなみにオスからは、針ではなく、こんな「二股」にわかれた交接のための器官が出てきます
(撮影・Kさん)。ちょっとマニアック?なお話しでした。