【アーカイブ版】セイヨウ情勢 : 市民参加による外来種(セイヨウオオマルハナバチ)モニタリングと対策のためのリアルタイム情報共有サイト

- 最終更新日: 2015年12月28日
本サイトは更新を終了しました。北海道生物多様性保全活動連携支援センター(HoBiCC)が運営する新「セイヨウ情勢」をご覧ください。

【過去の情報】マルハナバチたちは冬眠中

発信日:2007年12月11日
発信者:菊池 玲奈
北海道はもうすっかり「極寒」の季節を迎えられている頃と思います。
東京は相変わらずあまり冷え込まず、東大の銀杏がようやく黄葉の盛りを
迎え、黄金色の絨毯が敷き詰められています。しかし、絨毯の下には
ギンナン爆弾が仕掛けられていますので、うかつに歩くと大変な「臭い」に
悩まされることになります・・・。
皆様、お元気でお過ごしですか?
 
マルハナバチたちの活動シーズンも終わり、標本の到着もぱったりとなくなり
ました。在来のマルハナバチたちも、そしてセイヨウも、春の夢を見ていること
でしょう。今年の結果は、1月頃から最終的なとりまとめに入ろうと思っています。
皆さんがとってくださった、貴重なデータ。
今後のセイヨウの対策にいい形で還元できるように、私たちも精一杯頑張ります!
もしまだお手元に報告をお持ちの方がいらっしゃいましたら、お手数ですが東大宛、
ご送付お願いいたします(報告書のみ送付いただいても大丈夫です!)。
 
★ 冬の間、セイヨウはどこにいるの・・・? 日高のHさんからのメール ★
 
1996年、初めてのセイヨウの野生巣が発見されました。サクラソウを愛し、
自然を愛し、マルハナバチたちをこよなく愛するその方のお家の床下で、
初めての巣がみつかったのです。以来、ずっとお庭でのセイヨウの捕獲を続けて
くださっているHさん。
今年の9月、「セイヨウが穴を掘っていました」とメールをいただきました。
セイヨウはいったい何をしていたのでしょう?その後の状況も、ご報告いただき
ましたので、皆さんにも紹介させていただきます。
 
=9月18日のメール 「セイヨウが穴を掘っていました」=
 
雨の日の多い日々です。
ちょっとセイヨウが増え始め、教室の玄関に女王が入ったりしています。
例年より暖かいようで、ボリボリが出ていないかな、と庭をうろうろしていてブーンという
音の方をみていると、セイヨウの女王がうろうろしています。
どうするのかな、と見ていたら、穴を掘っているようです。
春の巣探しとちょっと雰囲気が違うので、そのまま見ていると、潜ってはバックして、
土を掻き出している様子。つい30分ほど眺めてしまいました。
穴はだんだん深くなっているようで、バックしてお尻の白いのが見えるのにだんだん
時間がかかり、なかなか出てこなくなって観察をやめてしまいました。
そのまま冬ごもりになるのかしら、それとも掘ってからも気に入らなかったら、場所を
変えるのでしょうか。
のぞいてみたいのですが、一人でのぞくにはもったいないような気もして、・・・。
それとももっと寒くなってから、掘ってみた方がいいかしら。
 
=12月3日のメール 「セイヨウが眠っています」=
 
以前書いた土に潜っていったセイヨウのことですが、土曜日にちょっと暖かかったので、
探してみました。
ほんの、10㎝も満たないところで、セイヨウはしっかり生きていて、ちょっともぞもぞ
しました。
雪のない大地はいま、解けたり、凍ったりをくり返しているので、地中に空洞がたくさん
出来ています。
表面の凍ったところをちょっとはぐると、すぐ見つかりました。
こんなに浅いところで、冬を過ごすということにとにかくびっくりです。
とりあえず、また土を戻しておきました。
なんだかただ捕獲するにはいとおしくて。
もう少し眠らせてあげようかな。なんて。いつまでに送ったらいいかしら。
 
・・・セイヨウに限らず、マルハナバチたちにとって「越冬」は非常に厳しい試練です。
「頑張って、春に思いっきり飛び回るんだよ」と言ってあげられないのがセイヨウには
申し訳ないのですが・・・。
それにしても、まさかこんなに身近な場所で、越冬しているのですね。
他の方からも秋口に「セイヨウが土にもぐっていったよ」「車庫の物陰に入っていったよ」と
いった報告がありました。
4月末頃、それらの場所から動き始めるセイヨウがみられるかもしれませんね。
Hさん、みなさん、情報、ありがとうございました。
 
 
★ 旭岳通信にかかれた「セイヨウ君」のこと ★
 
皆さん、旭岳ファンクラブをご存じですか?
東川町近郊の方を中心に、「大雪山に「思い」を持っている仲間が発行している、
地元発の情報誌です」(とりまとめをされている、旭岳ビジターセンターの方の言葉です)。
 
ちょっと昔話?をさせてください。
 
2005年の春、初めて「東川町役場」にお邪魔しました。
北海道で増え始めているという「セイヨウオオマルハナバチ」を「大雪山にいれないために」
研究室が監視活動を呼びかけ、その説明会が開催されたのです。
研究室に所属したばかりの私にも「セイヨウオオマルハナバチをとる手伝いをしてください」と
いう鷲谷教授からの厳命!「ハチ?刺すじゃん!?・・・わけがわからん・・・そもそも、
そんなに外来のハチがいるのだろうか・・・」。
たぶん、その会場にいらした皆さん、全員がそう思われていたと思います。
 
でもセイヨウは「いた」のです。しかも大量に・・・。
役場の横のサクラに次から次へと飛んでくるセイヨウ。遊びに来ていた子どもたちの「これは
学校のサクラにもいっぱいくるよ!」という証言。「セイヨウが見える眼」を増やさなければ
ならないことを痛感した瞬間でした。
 
2005年、はじめてセイヨウに出会う。
 
その後、活動を本格的に担当するようになり、不安の連続でした。
「本当にハチをとってもらうことなんて出来るんだろうか」「セイヨウを減らすことなんて
出来るんだろうか」「いったいどのくらいセイヨウは広がってしまっているんだろう」
そんな不安は、モニターさんたちとの出会いのたびに、吹き飛ばされていきました。
次々に送られてくる標本。ご自身の目で見て、感じて、記された調査用紙の
中に記された、地域の自然への熱い思い。「自然を守りたい」「何かをしたい」と
思う人たちの力が集まったとき、すごいことが起きる。そのことに、私自身、いつも
気持ちが高揚していました。
 
数百人の人たちが20,000頭を超えるハチを捕獲してくれるまでに活動が
広がっていること(これはあくまでも東大に報告されている数だけですので、実際は
もっともっと沢山の方がセイヨウの問題を認識してくださっていると思います)。
そして、東川町に誕生した「セイヨウの慰霊碑」。
外来種の対策のためには継続的に、圧力をかけ続けること。そして監視を続ける
ことが不可欠です。
あまりにも個人に負担がかかりすぎたり、辛い取組みになってしまっては、続かない。
だからこそ、ひとりひとりがつながることの意味が大きいのです。
 
2007年は、セイヨウの活動が特に新聞などにも大きく取り上げられた「特別な年」
でした。セイヨウの問題を新しく知ってくださった方も多いでしょう。
今後は、新聞報道ももちろんですが、実際に活動をしてくださっている方の「行動」が
社会の中で大きな広告になると感じています。皆さんが腕章を付けて、網を持つ姿に
「何をしているの?」と聞いてくださった方。その方が、自分の地域でもきっと、セイヨウを
とってくださっています。
そして、いつかセイヨウの存在が「新しい」問題ではなくなり、新聞やテレビをにぎわす
ことがなくなったときが、本当の勝負。
そのときにきっと、地域の人たちの「思い」で活動の行く末が決まります。
 
今、たくさんの生きものたちが危機的な状況に陥っています。その中で「乱獲」は
大きな理由のひとつとして挙げられています。人の「力」はそれだけの力を持っている。
乱暴ないい方だと承知はしていますが、この活動では、その力を信じていきたいと
思います。
皆さんからいただいたたくさんの情報を科学的に分析することで、効果的な対策や、
より重点的に活動を展開しなければならない地域などを明らかにし、皆さんにお返し
していきますので、どうぞこれからも、セイヨウの捕獲をお願いします。
 
今回の「旭岳通信」では、外来種が特集され、セイヨウの記事がトップに
なっています。まさに2005年の説明会の場所に一緒に参加し、人の輪を広げて
くださった方が「セイヨウ君」への思いを書いてくださいました。
 
ご覧になりたい方は、旭岳ビジターセンターで協力金100円で入手出来るそうです。
ファンクラブの入会も受け付けられているそうですので(年会費1,000円)、ご興味の
ある方はぜひ、ビジターセンターの方にご連絡ください。